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粉末油ゲル化剤とは

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粉末油ゲル化剤とは

 粉末油ゲル化剤は、油防除資機材としては、たいへん新しいものであり、1995年の海洋及び海上災害の防止に関する法律施行規則の一部改正により、その有効性により使用が認められました。
粉末油ゲル化剤がどうして油を吸着するかというゲル化の原理については、資料1に示します。
 粉末油ゲル化剤は、原油及び鉱物油系の溶剤だけに反応し、その主成分は白色,淡黄色の高分子ポリマーであり、ポリマーを電子顕微鏡で拡大すると、多くのポーラスが空いていて、その中に油が入り込んで高分子ポリマーを溶解して固めてしまうものです。
 状況によりますがが、通常は、5倍ないし6倍の油を吸着しますが、もっともよい条件の場合は、10倍の油を吸着して固まるというデータもあります。
粉末油ゲル化剤は投入と同時に油を吸着し始め、表面に未反応の粉末油ゲル化剤が見られた時これがほぼ飽和状態です。油及び溶剤の種類にもよりますが、砂消しゴムくらいの硬度になることもあります。

A重油を水面に添加した状態粉末油ゲル化剤を散布ゲル化した状態

 最初に開発したのが「αGel-1000」です。1994年に販売とテストをかねてオマーン、クウェート、サウジアラビアに行き、現地でテストを行いました。オマーンとクウェートの原油ではうまくいきましたが、サウジアラビアで問題がありました。
「αGel-1000」ではアラビアン・ヘビーが固まらなかったのです。そのため、重質油用の「αGel-1650」を開発しました。これは、固まるスピードを押さえて、できるだけ油を抱え込むようにしたものです。
 →αGelシリーズについてはこちら

 その後、オリノコという非常に粘度の高い油を産出するベネズエラに行き、側溝を流れていた重質油で実験してみたところ、うまく固まりました。
 粉末油ゲル化剤を実際に海洋で使用した例としては、ナホトカ号の事故の時は、散布の問題もあり、直接海洋には使用出来ませんでしたが、粉末油ゲル化剤を無償提供して、ボランティアの長靴やカッパなどに付着しているC重油を溶剤で洗浄し、洗浄溶液による2次汚染を防ぐために粉末油ゲル化剤を使用しました。

 海洋における粉末油ゲル化剤の使用の難点は、粉末であるので回収性に問題があるということです。実海域で波がない状況ではうまくゲル化しますが、波高が1~2mある海域ではスクランブルエッグ状になり、それを網で回収することになり、回収が難しくなります。
このために、吸着マットの一種として、粉末油ゲル化剤をマットの中に封入して使用できるようにしたゲルマットを開発しています。
 →粉末油ゲル化剤マットについてはこちら

ダイヤモンド・グレース号の事故の際には、従来の吸着マットでは船上に引き上げた時に甲板上での油の再流出があり、2次汚染の問題が発生したため、このゲルマットを関係官庁が相当数採用しました。
基本的には、粉末油ゲル化剤の使用は、オイルフェンスを張った中に散布するとかなりうまく油を回収できます。

 基本的には、粉末油ゲル化剤の使用は、オイルフェンスを張った中に散布するとかなりうまく油を回収できます。
 粉末油ゲル化剤が油だけでなく有害液体物質(Hazardous & Noxious Substances)へも使用できるのかどうか、2000年運輸省船舶技術研究所(現在、独立行政法人海上技術安全所)との共同で評価しました。(表-1NHSに対する有効性を参照)
 粉末油ゲル化剤には、油をゲル化することによって表面を覆うため、ベイパー(揮散)を抑制する効果もあります。このため、ガソリンスタンドの解体工事の時、最後に残ったガソリンは、どうしても完全には抜ききれないため、必ずガソリンが残ります。爆発の危険性は、満杯の状態よりも少ない状態の方が非常に大きいため、タンクに粉末油ゲル化剤を投入し、ガソリンをゲル化させる事により、爆発の可能性を非常に小さく出来ました。北海道の某製油所貯蔵タンクの火災事故の後に使用した実績があり、安全性の面でのベイパー抑制効果が非常に大きい事が証明されました(資料2)

 最近、河川での油流出事故に使用例が多く、河川での油流出事故は、毎年約5,000件近くの事故が起きています。河川、湖沼の場合は、行政においても、従来の界面活性剤のような油処理剤は、使用しないように指導されており、ゲル化剤が使用される事が多くなってきています。
 さらに、最近新たに開発したαGel-2000は、潤滑油、作動油等のゲル化に優れた効果を発揮します。
 →αGel-2000についてはこちら

資料1 ゲル化の原理

「粉末油ゲル化剤」は高分子ポリマーを主材料とし、効果的な作用及び安定保存等のために必要な添加剤を混合してあります。

 主成分の高分子ポリマーが油分を取り込み組成内に封じ込めて流動性を制限する性質を利用し、油を捕捉する機能(親油基と油分子の親和力)及びネットワーク形成機能(分子間の絡みつき)が同時に進行してゲル化油が生成されます。

 高分子ポリマーが油と接触すると溶解が始まり分子鎖がほぐれ、分子間の結合が弱くなるか消滅すると高分子ポリマーは溶けてしまいますが、下図のように分子鎖の絡み合いが十分残っている状態で溶解が停止(膨潤)し、時間の経過とともに生成したゲル化油の硬さが増加します。

 この機能は油分についてのみ作用し、水には反発するので油水混在の状態から油だけを分離してゲル化させます。ただし、表面に付着した水まで排除することはできませんので、生成したゲル化油には多少の水分が含まれます。


資料2 ゲル化剤による可燃性ガスの抑制効果

1.測定条件 測定器具 : 500ml硝子ビーカーに3種類の試料を250ml採取
2.試験方法 概略図に示す。
         測定機器 : GX-85N((株)カンツール社製)
         測定位置 : 処理後の油面の1cm上で測定
         測定温度 : 22℃~23℃

効 果:
表に示したように、油成分がゲル化剤によりゲル化して、油表面を覆って大気中へのガスの揮発、拡散を抑制したため、可燃性ガス濃度が危険濃度の状態から大幅に減少している。

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